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感謝知らずの男

「感謝知らずの男」1991年

萩尾望都は割とバレエや演劇の話を書いていて、本人も好きなようです。バレーシリーズとしては「ローマへの道」「感謝知らずの男」「フラワーフェステバル」、ミュージカルの話で「完全犯罪」など。その中でも、わたしがふといつも手に取るのはこの「感謝知らずの男」です。

主人公のレヴィはローマへの道という話のワキ役で、バレエダンサー。いつもうまい役で出ていて萩尾さんのマンガでは珍しく二枚目。レヴィシリーズで他に「オオカミと三匹の子ブタ」、「狂おしい月星」がある。

中学生の時これを読んだ時は、なんだか狂気を感じて2回まじまじと読みましたね。といっても他のSF作品とかと比べると決して難解な話ではないんだけど。この話では、レヴィは不眠症で静かな部屋を探しているのだが、隣人が彼の天敵の世話焼き人間。しかも隣人の彼女を巻き込んで、いつの間にか3角関係になっていく。

当時あたしが狂気を感じた部分は、3人が集まる修羅場の部分。なぜか、男のほうもレヴィが自分に恋していると思いこんだのだ。おもしろいのが、レヴィのことを2人がまったく理解してないこと。普通に考えたらレヴィなんてただのわがままなんだけど、読者にしてみればやっぱり主人公のがわにたってしまうわけ。それで、2人がとっても怖い存在に思えたんだろうな。

やっぱり22歳ともなるとですね~、なんだか普通に「ふ~ん」とか思って読めちゃうわけですねぇ。ピュアな心は一体どこへいったんだか。

「狂おしい月星」1992年

アーチーは駆け出しのカメラマンの卵。大学生の時にレヴィのファンに、そして友達になる。初め2人は上手くいっていた。しかしアーチーのカメラマンとしての成功、そしてあっけない人生の転落。いつも輝いているレヴィ。アーチーをつなぐ彼の彼女のガブリエラの存在。いつまでもアーチーのレンズの向こうのテレパシーを求めるレヴィ。これも決して幸福な話じゃないんだけど、この3人のどうしても交錯してしまう関係が悲しくも美しく描かれてます。シリーズ3作のなかじゃ、やっぱ一番いい。

最後にアーチーとレヴィが対面するんだけど、アーチーは落ちぶれてて、レヴィは依然活躍してて輝いてる設定で、不思議なことにほんとにレヴィの絵だけ輝いてるのが伝わってくる。萩尾さんのマンガはたまに映画みたいに時間が止まるように感じるコマがあるんですけど、それをその部分でも感じることができる話だと思います。

by qrarisu | 2005-06-08 11:18 | もー様教